Version2.3 改訂版によせて

 

MML Version2.21は,1999年11月1日に正式に発表され,本格的な実装の試みや,専門分野におけるSIG(Special Interest Group)発足と規格の開発が行われてきた.実装が進むにつれて,Version2.21で不足する情報や機能の存在が指摘された.これらを踏まえて,今回MML Version2.3をリリースする運びとなった.以下,改訂の概略を示す.

 

アクセス権定義改訂

MML Version2.21における文書アクセス権定義構造の見直しを行った.具体的には,文書ごとに参照できる施設,科,職種,個人IDを設定可能とした.追加・修正したエレメントは次のものである.

accessRight

アクセス権エレメント.設定するアクセス権の数だけ繰り返す.少なくとも,記載者が参照できないことがないように,記載者のアクセス権設定は必須とする.属性として,permit(参照の権利)を持つ.permit属性には,none(すべてのアクセスを不許可),read(参照を許可),write(参照,修正を許可),delete(参照,削除を許可),all(参照,修正,削除を許可)の値を持つことができる.また,属性としてmmlSc:startDate(開始日)とmmlSc:endDate(終了日)を持つ.

このエレメントの下位に,次の4つのエレメントをおく.

mmlSc:facility

施設単位でのアクセス権を設定する.

mmlSc:department

診療科単位でアクセス権を設定する.

mmlSc:licence

職種単位でアクセス権を設定する.

mmlSc:person

個人単位でアクセス権を設定する.

 

グループIDの新設

複数のモジュールを組み合わせて,要約や紹介状等を構築するためのグループIDの新設を行った.Version2.21では,モジュール間の関連付けのために,関連親文書ID(parentId)タグが用意されており,文書修正時の修正前文書の関連付け等に用いられてきた.しかし,MML実装において,モジュール単位で情報を管理する場合には,全く対等でまとまりのあるモジュール群は,同じ文書IDで管理されていた方が,検索抽出が容易であるとの指摘がなされた.このような背景を踏まえて,文書としてまとめる必要のある複数モジュールには,文書IDとは別個に,同じID(すなわちgroupId)を設定可能とした.

具体的には,MML文書ヘッダ(docInfo)内のdocIdの下位エレメントとして,uid(文書ユニークID),parentId(関連親文書ID)に続いて,groupIdエレメントを追加する.さらに,属性として,groupClassを置き,モジュール群の文書の種別(例えば紹介状)を設定可能とする.

 

健康保険モジュールの改訂

MML健康保険モジュールは,電子カルテ-医事システム連携にも用いられ,より詳細な情報項目の追加が求められた.被保険者の氏名等の個人識別情報は,Version2.21では患者情報モジュールにより記載していたが,患者が保険本人ではない場合に,保険本人の情報を記載する必要が生じ,健康保険モジュールに被保険者情報を追加した.また,患者負担率は,入院・外来で異なることがあるため,両者を区別した.他に,健康保険種別(法別のコードと名称),保険者情報(事業所名等),公費詳細情報が追加されている.

 

紹介状モジュール

紹介状は,既存の臨床サマリー情報モジュールを用いることが検討されたが,紹介目的等の不足情報項目が存在するため,新たに紹介状モジュールの新設を行った.

 

報告書モジュール

放射線に限定しない汎用的な報告書記述のためのモジュールを追加した.対象としたのは放射線学的検査,生理検査,病理細胞診検査であるが,個別の検査の詳細な構造化は行わず,単純な構造とした.

具体的な構造としては,モジュールとしてのルートエレメント(mmlRp:ReportModule)下位に,報告書ヘッダ情報(検査実施日時,報告日時,報告状態,報告書種別,報告書詳細種別,臓器,依頼者情報,実施者情報)と報告書本文(主訴,検査目的,検査診断,検査所見記載,外部参照,検査コメント,検査コメント名称,検査フリーコメント)が置かれる.

 

検歴情報モジュール

検体検査結果を構造化したモジュールの追加を行った.対象検査としては,検体検査であり,内分泌負荷試験,尿沈渣を含む.細菌培養検査,病理組織検査,細胞診は対象外とする.一モジュールは,通常の運用では,一依頼伝票(もしくは一検査セット)にあたる.検査項目コードは,施設固有コードとJLAC10コード(日本臨床検査医学会)の併記を可能とする.

具体的な構造としては,モジュールとしてのルートエレメント(mmlLb:TestModule)下位に,検歴ヘッダ情報(mmlLb:information)と検体単位の繰り返しとなる検体検査結果情報(mmlLb:laboTest)を置く.検歴ヘッダ情報には,依頼ID,採取日時,受付日時,報告日時,報告状態,セット名,依頼施設,依頼診療科,依頼病棟,依頼者,検査実施施設,検査実施者,報告コメント,報告コメント名称,報告フリーコメントが入る.さらに,検体検査結果情報には,検体情報(検体材料,検体コメント,検体コメント名称,検体フリーコメント)および,項目情報(項目名,施設固有コード,施設固有コード体系名,分析物コード,識別コード,材料コード,測定法コード,結果識別コード,値,値「数値」,上限値,下限値,基準値「文字」,異常値フラグ,単位,外部参照情報,外部参照,項目コメント,項目コメント名称,項目フリーコメント)が入る.項目情報は,項目の数だけ繰り返す.

 

テーブルの追加

上記モジュールの改訂,追加およびアクセス権定義の修正に伴い,以下のテーブルが追加された. 

MML0031  Insurance Class (保健種別)

MML0032   Pay Ratio Type(負担方法コード)

MML0033   Medical Role

MML0034   アクセス許可区分

MML0035   施設アクセス権定義

MML0036   個人アクセス権定義