はじめに

 

CLAIM(CLinical Accounting InforMation)は,医事会計-電子カルテ連携のためのデータ交換仕様である.電子カルテシステムと医事会計システム(もしくはレセコン)との電子的データ交換を標準化,粗結合化(オープン化)することのメリットとして,電子カルテシステムの開発促進が挙げられる.現在,多くのメーカーが電子カルテ事業に新規参入を図っている.医事会計システムを独自に持たないベンダーが電子カルテ事業に参入しようとする際に,これらのベンダーは大手の医事会計システムごとにインターフェイスを開発する必要がある.CLAIMを策定しておけば,電子カルテベンダーはCLAIMに対する一種類のインターフェイスを開発するだけで済み,開発効率の向上とコスト削減につながる.また,医事会計システムベンダーにとっても,ユーザから電子カルテ導入を依頼された際に,独自に新たな開発を行う必要がなくなり,さらに,紙カルテから得ていた情報の一部を,電子カルテから自動的に抽出することが可能となり,メリットが生じると考えられる.

MedXMLコンソーシアムでは,診療データを異なる施設間で電子的に相互に交換するための医療情報交換規約Medical Markup Language(MML)の策定と管理を行っている.MMLの実装が進むに伴い,様々な分野に特化した構造が必要となってきたが,本組織で全ての診療分野をカバーすることは事実上不可能であり,頻繁に起ると予想される部分構造の新設/変更が全体構造におよぼす影響を考えると,バージョン管理等の点で効率的でない.よって,バージョン2以降のMMLでは,XML Namespaceを用いて,ある情報のまとまりをモジュール化し,必要に応じてモジュールを組み合わせて使う方法を採用している.これにより,各診療分野特有の記述形式が提案可能となり,論理構造策定作業の分業化が可能である.

CLAIM仕様書で定義されるCLAIMモジュール(予約請求モジュールと点数金額モジュール)は,このようなMML開発の一環としてMMLモジュールの一つとして開発された.CLAIMがMML仕様書に含められなかった理由として,以下のことが挙げられる.

  1. 医事上の都合により,頻繁にバージョンアップされる可能性が高いこと.
  2. 日本固有の構造を取っているため,MMLとは異なり国際的な仕様にはならないこと.
  3. 仕様の管理は医事ベンダーを中心に行われるため,管理グループがMMLとは異なること.

CLAIMはMMLを上位規約とするため,MML仕様書に記載されている仕様が,CLAIMにも適用される.